W元理事官を特別背任で告訴も~財テク会社役員会が検討

1988/10/19毎日新聞
 「外交官財テク」問題の“主役”であるW元ジュネーブ代表部理事官(30)が外務省退職後、ウォルト・ディズニーの「セル画」(セルロイドに描いた絵)やメダルを財テク商品として売り出そうと、著名な経済評論家や税理士を誘い、大阪に設立した卸会社と販売中継ぎ会社が放漫経営から閉鎖状態になっていることが18日、わかった。また、同日夕には2社の合同役員会が開かれ、W元理事官がセル画仕入れのための多額の資金を個人的に調達、役員会に無断で卸会社に貸し付け損害を与えたとして、W元理事官を特別背任罪で告訴する方針を固めた。

W元理事官が昨年末、大阪市に設立した投資情報サービス会社(その後セル画卸会社に変更)の「グローバル・プランナー」と、その販売中継ぎ会社(大阪市)に出資していたのは、マスコミに経済評論家として登場する投資情報会社「マネーマネイジメントインスティチュート(MMI)」(東京)の井畑敏社長(40)、著名な税理士で経営コンサルタント業「岩崎経営センター」(大阪市)の岩崎善四郎社長(58)、それにベテラン公認会計士の3人。
関係者の証言によると、W元理事官は昨春、外務省を退職、帰国した際、面識のあった井畑社長に「スイスで培ってきたノウハウを生かして、グローバルな投資顧問をやりたい」と持ちかけて、協力を要請。岩崎社長らにもグローバル社などへの出資と役員就任をもちかけ、2社を設立した。
グローバル社の資本金は、W元理事官に加えて井畑、岩崎両社長ら3人が200万円ずつ出資。W元理事官が社長に、井畑、岩崎両社長が非常勤取締役になり、公認会計士が監査役に就任した。中継ぎ会社についても、井畑、岩崎両社長と公認会計士は150万円ずつ出資、グローバル社と同じ役職に就いた。
その後、W元理事官は役員らの承諾を得ないで調達したセル画購入資金をグローバル社に貸し付けた形にし、約850点を総額約6,000万円で買い付けた。

ところが、グローバル社と中継ぎ会社は先月から事実上、閉鎖状態になり、一般投資家との「1年後に2倍の価格で買い戻す」との契約履行は困難で、井畑社長らは「役員が肩代わりせざるを得ない」としている。
2社の合同役員会ではW元理事官が役員の承認を得ず、セル画購入資金をグローバル社に貸しつけていた点などについて、岩崎社長が「W元理事官の行為は特別背任行為と思われる。刑事告訴をすべきだ」と提案した。大半の役員が同意を示しているという。